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NFLから見えるアメリカ

アメリカ人が最も好きなスポーツはフットボールである。ある調査では41%の人が一番に挙げ、二番手の野球(10%)三番手のバスケットボール(9%)を大きく引き離している。ラグビーを源流とし、彼ら好みに作り変えた姿はアメリカそのものに見える。全身にアーマー(鎧、防具)を付けた大男たちが縦横斜め、全速力でぶつかり合う。興行収入も断トツでパンデミック前の19年、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)だけで160億ドルを稼いでいる。

眩しいほどの栄光だが、そこには深い陰も宿す。NFLのスター選手でもほとんどが三年で引退する。試合中は毎日脳震盪を起こしているようなもの。多くの選手が脳に障害を受けて若年性アルツハイマーとなり、50代で亡くなるという。ラグビーも激しいがアメフトに比べれば怪我は少なく、選手寿命も長い。
防具の有無に両者の違いがある。人間の体は自然の一部。生身のぶつかり合いならば双方に自己防衛本能が働く。防具によって外界と遮断された途端に肉体は凶器と化して相手を粉砕する。同時に自身も痛めつけていく。

アメリカ史を振り返れば戦争ばかり。先住民であるインディアンの掃討。英国からの独立戦争、南北戦争。第二次世界大戦後も朝鮮戦争、ベトナム戦争。アジア、中東、アフリカ。所かまわず爆弾を落として回った…。そんな印象だ。

ラグビーは自分より前に楕円球をパスすることができないが、アメフトはどこにでもパスできる。それが米軍による空爆とダブってみえるのだ。

ソビエト連邦の崩壊で唯一の超大国となったが、戦争に明け暮れた歳月の「毒」が回ってきているのではないだろうか。アメリカでは軍需産業が肥大化して国政を牛耳る。それは軍産複合体と呼ばれ、世界中に紛争の火種をばらまいてきた。武器を売るためだ。軍事以外の産業は安い労働力を求めて生産拠点を海外に移し、国内はガタガタである。たとえば彼らは産油国なのに掘らない。いろいろと理由をつけているが、海外産原油を買う方が安いからだろう。製鉄、自動車も似たような状況だ。かくして輸入・消費大国が出来上がった。かつて「自動車の都」として繁栄したデトロイトはいまや失業者にあふれ、薬物乱用と性暴力、人身売買がはびこる犯罪都市に堕している。

財政赤字は天文学的に膨らみ、24年8月、35兆ドルを超えた。1ドル150円換算で5250兆円。既にコツコツ返済できる額ではない。有り体にいえば踏み倒すしかない。デジタル通貨を発行して自国民の生活基盤をそちらに切り替え、旧ドルを紙屑にする。1ドル=30~40円(あるいはそれ以下)に暴落させれば誰からも見向きされない屑ドルになる。つまり返済したのと同じことだ。

かつての世界恐慌に倍する巨大恐慌が起きる。日本は世界最大の米国債保有国。米国企業の株式、債券も持て余すほど持っている。アメリカ経済が破綻すれば日本経済もアウト。親ガメと子ガメの関係である。日銀は債務超過に陥り、国有化する以外にないと思われる。各銀行も営業は続けていても実態は国家管理。そのような事態になると思われる。

ただ、悪いことばかりではない。米軍は日本からも韓国からも撤退し、東アジアは平和になるだろう。憲法9条が輝く。マッカーサーは熱心なクリスチャンで戦後日本に理想郷を作ろうとした。憲法9条はその置き土産だ。パンドラの箱の底。忘れかけていた宝物である。新しい時代が来る。

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