(1)
関節リウマチの治療薬はメトトレキサート(免疫抑制剤)、プレドニン(副腎皮質ホルモン剤)である。これら主治療薬の副反応をサポートするために以下の薬が処方された。アレンドロン酸錠「サワイ」(骨粗鬆症治療薬)、エルデカルシトールカプセル(同)、バクトラミン配合錠(合成抗菌剤)、フォアリミン錠(葉酸製剤)、ランソプラゾール錠(胃・十二指腸潰瘍など治療薬)である。これらのセットが私への標準治療であった。
メトトレキサートを服用する患者さんへ 第3版
日本リウマチ学会によるとメトトレキサートは
イ)免疫抑制作用と抗炎症作用をもち、比較的安価でもあるため世界的に最もよく使用されている抗リウマチ薬である。特に関節リウマチの治療においては、多くの患者さんにはじめに使われる薬剤(第一選択薬)であり、アンカー薬剤とも呼ばれている。
ロ)効き目は早ければ二週間目頃より関節症状が良くなり始める。
ハ)最終的には三割くらいの患者さんはほぼ完全に痛みや腫れがなくなる寛解という状態になる。この薬を長く継続できる患者さんの割合は従来型リウマチ薬の中では最も高い。メトトレキサート一剤で効果が不十分な場合でも、他の抗リウマチ薬と組み合わせて使用すると、さらに多くの患者さんの症状が改善する。
ニ)メトトレキサートは6mg~8mg/週から始めて量を増やしていくが、16mg/週を超えてはならない。
服用する薬は曜日ごとに違う。私は一週間分の薬を小分けして袋に入れた。一日二回。朝食後と夕食後。併せて14の小袋である。間違えてはならないと主治医からも言われている。外出する気にもならず、一日が長い。転機は意外なところからやってきた。
(2)
ユーチューバー及川幸久氏の動画に宮川路子さんという人が出演した。東京でクリニックを開きながら、大学で公衆衛生を教えているという。彼女は水素療法の素晴らしさを語った。その中で「水素は自己免疫疾患にも有効である」との発言があった。私は「これだ」と膝を打ちメールを送った。たちまち返信されてきた。以下、宮川先生との往復メールの一部を紹介する。
6月17日
こんばんは。お問合せを頂きまして有難うございました。及川さんの番組をご覧頂き、水素に興味を持って頂けてとても嬉しいです。心よりお礼申し上げます。本をお読み頂けたらと思いますが、関節リウマチに対する水素の効果は研究によりかなり確実なものとなっております。まずは本をお読みくださいませ。ステロイド(副腎皮質ホルモン)の副作用も水素が抑える可能性がありますし、ステロイドの量を減らせることが期待できます。もちろん、個人差がありますが。
6月17日
早速の返信、ありがとうございました。ご著書は目下のところアマゾンなどで売り切れ状態でしたので、近所の書店に発注しました。ご著書を読んでから、ご連絡を差し上げます。
宮川先生の著書「最強の水素術」を入手できたのは6月末。「最強の水素術」。タイトルが気に入った。「学」ではなく「術」。私は学生時代に船乗りを目指していた。航海学ではなく航海術だった。たとえば海。それは大気と海水の接するところ。そこに波が立つ。その波の形状を数学的に表現しようとしても不可能である。高等な数学も、膨大な計算も及ばない。しかし、人間は長い経験で荒波を越え太平洋を渡ってきた。全ては「術」なのだ。
宮川先生が7年前に開いたクリニックは統合医療クリニックであり「患者さんが一度しか受診しなくて済むようにする」という信念のもとに運営されているという。水素の効能を説明する力は私にはないが「最強の水素術」には数えきれないほどの疾病に効果があることが紹介されている。高血圧、脂質異常、動脈硬化、肥満、心筋梗塞、アルツハイマー型認知症、がん、アトピー性皮膚炎、喘息、白内障、うつ病、自閉症、関節リウマチ、歯周病、しみ、しわ、老化、かれこれ。
ねじ伏せるような筆致ではない。しかし、確たる信念とデータに基づいていることが伝わる。巻末の参考文献。点眼鏡の力を借りなければ読めないような細かい文字で論文群が紹介されている。おそらく列挙された何十倍もの論文を読み込み、自身の研究の裏付けがあってこの本は書かれたのだ。私は水素発生器を購入した。
7月14日
先ほど届きました。説明書を熟読の上、使います。有難うございました。
7月14日
吸入は、鼻から吸って、呼気は口から出すようにすると効率が良いです。できるだけ60分モードで吸入してください。最初の立ち上がり3分くらいは水素ガスが吸入器内の空気に広がるのに時間がかかるために濃度が薄くなります。もちろん、お時間が無い時は30分でも大丈夫です。若干の水蒸気も一緒に入りますので鼻腔が保湿される効果もあります。この吸入器(リタアクア=商品名)で作る水素水は沸騰させてもある程度還元力が残りますが、やはり作ってそのまま飲むのが一番です。また、凍らせても大丈夫ですのでもし氷をおつくりになる場合には水素水で作ってください。生け花を活けるときに、水素水をお使いになるとお花が長持ちするようです。お試しになってみてください。お米をつけおきして炊くと甘くて美味しくなるとの報告もあります。
私は水素ガスを鼻から吸引した。変化はたちまち現れた。台所で干物を焼く匂いがした。私はそれを二階の部屋で嗅いでいる。窓を開けると草いきれ。植物の気配が生々しい。臭いを嗅ぎ分ける細胞が新しいものに入れ替わったような気がした。これまでの私は臭いを遮断した世界に生きていたのではないだろうか。都会生活にはほとんど臭いがない。履けなかったサンダルが「すっ」と入った。そして何より、熟睡するようになった。朝までぐっすり。ほとんど夢をみない。たまに見てもハッピーエンドの楽しい夢だった。
(3)
7月18日
使い始めました。順調です。関節リウマチの標準治療と並行しての水素吸入です。及川さんの番組を見るまで水素のこと全く知りませんでした。普段はアメリカの政治情勢を伝えている彼が水素だったのには驚きました。酸化と還元。表面的な事実は中学か高校の理科。すぐに頭に入りました。しかし、その言説に説得力があるか否かは別の問題です。私の場合、宮川先生の体全体から発せられる何か。困った人を助けたいというこころざし、無邪気さ、気品でしょうか。ジップロックのような密閉性の袋にスマホを入れて「及川さんの番組を見ながら水素の風呂に入っています」と言われた瞬間に「あ、これやってみよう」と感じた次第です。何か困りごとが起きましたらメールいたします。今後ともよろしくご指導ください。水素の効果は既に出ています。両手の指が動き、楽に箸を持てるようになりました。履けなかったサンダルが履けるようになりました。足の腫れが微妙に小さくなったのです。わずか数日の効果です。
7月22日
水素吸引を始めて一週間ほどが過ぎました。箸を持つのが楽になったこと、サンダルが履けるようになったことなど先に報告した通りです。改善しているという実感が日々あります。今日は家の雨戸を自分で開けることができました。昨日からは一人で風呂に入っております。「無理しないで」と妻に言われながらも、毎日、何かが「できるようになる」という原始的な喜びがあります。水素を吸入していること主治医の先生には黙っています。
退院して二度目の検診(四週間に一度)。肝機能、腎機能など異常なし。嬉しかったのは血液中のCRP値が0・17まで下がったことだった。CRP値は体内の炎症度合を示す指標で0・14以下(医療機関によって多少の幅がある)が正常値とされる。関節リウマチ患者にとって重要な数値である。私の場合、退院直後は2・7(上限値の約20倍)だった。それが急降下した。主治医には私が水素吸入していることを言うことができない。「あなたの投薬を信じていません」と言うに等しい行為のような気がするからだ。
7月25日
こんにちは。また詳しい情報をお知らせくださいまして有難うございました。及川さんにもお知らせしましたら、全快をお祈りしております、とおっしゃっていました。
リウマチのきっかけ、抗原となるものがあったのですね。西洋医学の検査では説明がつかないことがたくさんあります。私は患者さんの感覚(あれが原因だ!というような)が重要だと感じております。そして、水素のようなもので良くなれば、なぜかはわからなくても、それでよいと考えております。主治医の先生は首をかしげると思いますが、理解してもらおうと思っても難しいです。でも、同じような症状の患者さんには伝えて頂ければと思います。ただし、主治医のいうことだけを忠実に守って、水素には見向きもしない人もいます。主治医に相談するとほとんど否定されますが、勝手に、悪いものでなければやってみようか、という気軽な気持ちでお始め頂く方がびっくりするほど良くなられるのです。
私は、水素は信じる人は救われるのは当たり前で、信じない人(手に取ってみない人)は救われない、改善するチャンスをつかむことができない、と実感しています。本当に残念な方がたくさんいらっしゃいます。なんとかして水素の素晴らしさをもっと広めていきたいと願っております。日々できることが増えるというのは素晴らしいですね!まさに、細胞、機能が若返っていっているのだと思います。ぜひたくさんお続けくださいませ。
(4)
8月8日
こんばんは。メールを頂いておりましたのに返信もれておりまして、失礼致しました。言い訳ですが、先週ころんで左手を負傷し(骨折は免れましたが、いまだかなり痛みがあります)、パソコン作業もままならず、メールの返信がほぼ止まっております。今もまだ動きは悪く、時間もかなりかかります。
8月9日
早く、お怪我が治りますよう祈っております。
8月30日
本日、退院から三回目の検診を受けました。CRPの値は前月の0・17からさらに下がって0・09。この数値によりステロイドの量が減りました(1日あたり5mg→4mg)。メトトレキサートは増量されます。腎機能、肝機能かれこれ全く問題がないからです。生活実感としても、あちこちの関節の機能が回復しています。私は水素を鼻から吸入しており妻にも勧めたいのですが、これが頑固者でなかなかウンと言いません。
8月30日
こんばんは。
またまた嬉しいご報告、有難うございます!炎症反応が下がって症状も改善なさったとのこと、素晴らしいですね!それなのに免疫抑制剤を増やすとは。。。
8月30日
日本リウマチ学会の指針を見ますと、免疫抑制剤(メトトレキサート)は通常10~12mg/週まで増やすと書いてありました。16mg/週以上は使ってはならないとも。目下、十分な回復傾向にあるのに増やすというのは素人の私にも「???」です。主治医は「10mgまでは何ともなくても12mgにしたらかれこれの副作用が出る場合がある。その際はすぐに電話してほしい」と。「12mgにして寛解を目指しましょう」とも。私、目方が重い(93キログラム)ので、そのように判断されたのか、とも思っています。
8月30日
井口さま。手はだいぶんよくなってきました。折れていなかったので助かりました。ご心配頂きまして有難うございます。メトトレキサートは、がんのリスクもあがりますし、症状が改善しているのにどうして増やすのか不思議です。きっと、改善しているので、もっと増やすともっと良くなるとの考えかと思います。裏に水素があるのをご存じないので仕方無いかと思います。私の知人が膠原病でステロイドとメトトレキサートを使用しておりましたところ、いきなり末期がんの状態でみつかりました。現在闘病中です。もし自分のことでしたらステロイドもメトトレキサートも減量するかと思いますが、主治医の先生のご意見もありますので、ご自分でよくお考え下さいませ。改善し始めた時期と、薬の量、水素を開始した時期などから、ご本人が一番よくお分かりだと思いますので。
8月31日
貴重なアドバイス、有難うございました。「飲んだふり」をしてやり過ごします。宮川先生は「どうぞよろしくお願い致します」を二度、書いてくださいました。善神様のご指導と、そのように受けとめました。宮川先生とご縁を賜りましたことに感謝しております。
(5)
メトトレキサートを12mg/週にしたころから私の体にはっきりとした変調が現れた。「あんた、髪が薄くなってるよ」と妻から言われた。毎月の散髪屋さんでも「このごろ、苦労が多かとじゃなかですか」。鏡に映った頭頂部を眺めたらわずかに髪が残っているだけだった。変化はずいぶん前に始まり、少しずつ進行していたようだ。頭髪の減少を初めて自覚した。
知覚異常もこのころから始まった。入浴である。最初は熱いぐらいの湯だったはずが数分間浸かっているとぬるいと感じ、給湯器から湯を継ぎ足すようになった。本来はポカポカと温まる水素風呂である。それなのに…。
「おかしいな」と感じながらも原因が分からなかった。知覚異常は冬場にはっきりした。まるで水風呂に入っているように感じ、上がって脱衣場で着替える時にはガタガタと震え始めたのだ。宮川先生に相談したが、そんな事例は聞いたことが無いといわれる。
四週間ごとの検診。主治医に副作用が強いことを訴え12mg/週を10mg/週に減じてもらった。診察を終えて調剤薬局に処方箋を提出したときに、私はことの本質を感じた。薬剤師からこう言われたのである。
「良かったですねえ。こんな怖い薬が減って」
建前で言えば、医師の処方内容を云々する発言は職務として疑問があるのかもしれない。しかし、彼女の何気ない言葉に本質が潜んでいると私は確信した。宮川先生のメール(8月30日)にあった事例を思い返した。同様の標準治療を受けていた人がいきなり末期がんになったという。免疫を抑制するとはそういうことなのだ。私は怖くなって10mg/週という処方にも関わらず8mg/週しか服用しないことにした。医師は処方する。飲むか否かは自らの判断だと、そのように考えを変えた。翌月からは6mg/週に減らした。真面目な主治医の顔が浮かんだが、脱衣場で震えたことが私の背中を押した。
11月、ステロイドは毎月減ってついにゼロになった。メトトレキサートも8mg/週の処方に減ったが、自主的にさらに減らして4mg/週に。私は短気な性格。粗忽者である。12月中旬からは服用を止めた。6mg/週からスタートしたのだから、これより減らすのであればゼロでも構わないだろうと勝手に決めたのである。
宮川先生から頂いた年賀状に「メトトレキサート。リバウンドは大丈夫ですか」と書き添えられていた。やんわりとたしなめてくださったのだった。リバウンド防止に再び2mg/週を服用した。1月末まで2mg/週。1mg/週を2月末まで。以降は1mgを二週間に一度服用した。そのようにしてメトトレキサートをフェイドアウトしていった。
3月27日
最後の検診となった。CRP値0・05。これまでの最低値である。主治医からは「メトトレキサートの量も少ないから副反応も少ないはず。それでもこれだけの改善がみられる」という趣旨の発言があった。水素のことは彼に黙っていて正解だったようだ。向こう三か月分の薬を処方されたが、私は薬局には行かなかった。 すでに寛解したのだ。これで十分だという感覚が私にはあった。たぶん正しいだろう。その夜、水素風呂に浸かると体の芯から温まり、いつまでもポカポカした。いつの間にか、知覚異常も消えていた。